わたしの存在

母は機嫌が悪いと
「お前なんか死ねばいいのに」と憎しみを込めた声で私に言った。
私がなにか悪いことをしたのだろうけど、
何をしたのかは覚えていない。
覚えているのはその母の三角に尖った目だけだ。
20ぐらいの頃 母との関係にうんざりした私は東京に出た。
しかし胸に抱いていた思いはことごとく失敗に終わり
まるで指から砂からこぼれていくみたいに
なにもつかむことができなかった。
若いころによくある話。
生きる意味もわからなく
死ぬ勇気もなく
助けてくれる人もいなかったので
夜の街で働いた
そこには、私を必要とする人がいた。
気の利いたことも話せず
煙草に火をつけることもせず
なにもせずただ座っていた
「だいじょうぶ
君はなにもしなくても
いるだけでいいんだよ」
ばかばかしいことだけれど
そんな見ず知らずの客に言われた一言が
特別な愛情もなく軽く言ったその一言が
私を救った。
おかしなもんだなと思う。
それから何年たっても疲れた時は
その言葉を思い出す。
「いるだけでいいんだよ」
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